【寸劇で学ぶ】ロカベンで挑む!第3話:競合の壁!差別化のヒントは顧客の声にあり

前回のあらすじ

新規事業として「コワーキングスペース」を構想した田中社長と秘書の佐藤凛子。ロカベンの第1視点「顧客・市場」をSTP分析で整理し、”孤独なリモートワーカーや起業準備者が前進できる場”という方向性を見出した。

しかし次の課題は、「他と何が違うのか?」──差別化の壁。凛子は新たな仲間とともに、競合の実態を探ることになる。


第1章:凛子、競合の壁にぶつかる

月曜日の朝。会議室のホワイトボードには、田中社長直筆の大きな文字が躍っていた。

「差別化!他にはない強み!」

田中「コワーキングはどこも同じに見える。”うちだけのウリ”を見つけるんだ!」

凛子は苦笑いを浮かべた。また始まった。でも今回は、私も少し答えが見えてきた気がする。

凛子「その”ウリ”をどう見つけるかが問題なんですけど……。」

そこへ、いつものように鈴木税理士が現れた。だが今日の彼の表情は、いつもより険しく見えた。

鈴木「そのために、今回は5フォース分析を使いましょう。」

田中「ふぁいぶふぉーす?」

鈴木「業界の”競争要因”を5つの力で整理する手法です。
①新規参入の脅威
②代替品の脅威
③既存競合の対立
④供給者(仕入先)の交渉力
⑤顧客(利用者)の交渉力

これを使えば、”なぜ儲からないのか””どこに余地があるのか”が見えてきます。」

凛子は鈴木の熱い説明に驚いた。(先生、いつも冷静なのに、説明がやけに熱い……何か、深刻な問題があるのかしら?)

第2章:5フォースで見る”コワーキング業界の現実”

鈴木がホワイトボードに複雑な図を描きながら話す。その手の動きには、いつもにない緊張感があった。

鈴木「まず、”既存競合”──市内には5社ほどありますね。おしゃれ系、起業支援系、企業連携型……。価格帯はどれも月1万円前後。つまり、価格競争になりやすい市場です。」

凛子の胸に重苦しいものが沈んだ。やはり、簡単な市場ではないのね。

凛子「次に”代替品の脅威”──カフェ、自宅、オンラインコミュニティ。確かに、利用者の目的によっては代わりになるものが多いですね。」

鈴木「そう。コワーキングの宿命は、”なくても困らない”と思われやすいこと。」

田中の顔が青ざめた。

田中「なるほど……たしかに”便利な場所”だけでは弱いな。」

鈴木「”供給者”と”顧客”の交渉力も見てみましょう。仕入れ先は設備業者や不動産オーナー、固定コストが高く下げにくい。顧客は多様で、移り気。つまり利益率が上がりにくい構造です。」

凛子は息を呑んだ。こんなに厳しい業界だったなんて。

凛子「……厳しい市場ですね。」

鈴木「ええ。だからこそ、”差別化”が不可欠なんです。他が”空間”を売っているなら、あなたたちは”結果”を売らなければならない。」

田中「結果?」

鈴木「”ここに通うと前に進める”という実感です。それが顧客にとっての”穴”なんですよ。」

凛子の心に、かすかな希望の光が差し込んだ。“結果”を売る……それなら、私たちにもチャンスがあるかもしれない。


第3章:現場調査へ──新メンバー登場

翌週。凛子は会社の玄関で、初対面の同僚を待っていた。

コツコツコツ…

軽やかな足音とともに現れたのは、明るい笑顔の女性だった。

柚木「初めまして! 柚木遥(ゆずき はるか)です!マーケティング勉強中ですが、聞き込みは得意です!」

凛子「心強いわ、柚木さん。今日は利用者の”本音”を探るのが目的です。」

凛子は柚木の明るさに救われた気分だった。一人じゃない。心強い仲間がいる。

市内のコワーキングスペースを3軒巡り、利用者に話を聞いていく。1軒目は洗練されたインテリアの「クリエイティブラウンジ」、2軒目は起業家向けの「ビジネスハブ」、3軒目は格安の「シェアワーク」。

柚木「”なんでここを選んだんですか?”」

利用者A:「家だと集中できないし、コーヒー飲み放題だからかな」
利用者B:「イベントが多いけど、仕事につながるわけじゃない」
利用者C:「人は多いけど、結局みんな黙って作業してる」

3軒目を出た時、凛子と柚木は顔を見合わせた。

凛子「どこも”交流したい”と言いつつ、実際は”孤立した作業場”になってる……。」

柚木「”人と関われる環境”を求めて来てるのに、誰とも関われない……皮肉ですね。」

凛子の心に、鋭い洞察が宿った。

凛子「……そこに、差別化のヒントがあるかもしれない。」


第4章:顧客の声から見える”真の課題”

オフィスに戻り、凛子は鈴木税理士に興奮気味に報告した。

凛子「利用者の多くが、”仕事の相談や、具体的なアドバイスが欲しい”と言っていました。でも運営側はスペース提供が中心で、そこまで関与していないようです。」

鈴木の目が光った。

鈴木「それは大きな気づきです。つまり、顧客は”場所”ではなく”成長機会”を求めている。”作業”から”成果”へのサポートを設計できれば、他にはない価値になります。」

田中が勢いよく手を叩いた。

田中「なるほど……。単なるコワーキングじゃなく、”前進を支えるコミュニティ”にすればいいんだ!」

柚木も目を輝かせた。

柚木「それなら、”毎月の成果共有会”とか”ミニ相談会”を設けるのもいいかも!」

凛子は確信を込めて言った。

凛子「”成果が生まれる場所”っていうキャッチコピー、どうでしょう。」

鈴木「いいですね。そこに”誰が支援するか”を明確にすれば、ポジショニングが完成します。」

やっと見えてきた。私たちの戦う場所が。 凛子の胸に、静かな興奮が湧き上がっていた。


第5章:ポジショニングマップで見えた差

凛子はホワイトボードにポジショニングマップを描いた。横軸に「空間重視 ⇔ 支援重視」、縦軸に「価格低 ⇔ 価格高」。

凛子「他社は”おしゃれな空間×低価格”に集中してます。私たちは”支援重視×中価格”で空白地帯を狙えます。」

鈴木「素晴らしい。競合が混み合う場所を避け、未充足ニーズの領域を突くのが戦略の基本です。」

田中は興奮して立ち上がった。

田中「つまり、”成果が出るコワーキング”という新しいカテゴリを作るんだな!」

だが、柚木が重要な指摘をした。

柚木「その支援を誰が担うか──そこが次の課題ですね。」

凛子の高揚感が、一瞬冷めた。そうだった。コンセプトは見えたけど、実現できるかは別問題。

鈴木「そうです。”成果を支える仕組み”を作るには、経営資源の棚卸しが必要。次は自社の強みをVRIO分析で見極めましょう。」


第6章:見えてきた道筋、見えない実現性

会議の終盤、凛子は自分たちの進歩を実感していた。

ターゲット:孤独なリモートワーカー
ニーズ:成長機会とサポート
差別化:成果が出る支援付きコワーキング
空白市場:支援重視×適正価格

凛子「やっと、私たちの”戦う場所”が見えてきましたね。」

柚木「でも、具体的にどんな支援を提供するんでしょう?」

田中「それは…」

田中の言葉が詰まった。皆の視線が鈴木に集まる。

鈴木「次回は、自社の経営資源を徹底的に分析しましょう。”何ができるか”を明確にしてから、”何をするか”を決める。これが戦略の正しい順序です。」

凛子は複雑な気持ちでホワイトボードを見つめた。美しい戦略図ができたけれど、肝心の実行力は未知数。次が正念場ね。


第7章:秘書の成長と新たな挑戦

その夜、凛子は柚木と一緒に残業していた。

柚木「今日はお疲れ様でした!市場調査、思ったより面白かったです。」

凛子「私も、一人では気づけなかったことがたくさんありました。ありがとう。」

柚木「でも、次のVRIO分析って何ですか?」

凛子「企業の強みを客観的に評価する手法よ。Value(価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣困難性)、Organization(組織)の4つの視点で分析するの。」

柚木「すごく詳しいですね!」

凛子「最近、勉強してるの。社長の無茶振りについていくには、私も成長しないと。」

凛子は窓の外の夜景を見つめながら呟いた。

数ヶ月前の私なら、こんな分析はできなかった。ロカベンやSTP、5フォース…いろんな武器を手に入れた。でも、本当の戦いはこれからなのね。


今回の学びポイント

鈴木税理士のまとめ講義

“競合分析”とは、単にライバルを調べることではありません。顧客の代替行動を理解し、「なぜ自社が選ばれるか」を構造的に整理することです。

5フォース分析で業界構造を把握

  • 既存競合、新規参入、代替品、供給者、顧客の5つの力を分析
  • 業界の収益性と競争の激しさを客観的に評価
  • 「なぜ儲からないのか」の構造的要因を発見

顧客の声で本当のニーズを発見

  • 表面的な要望と深層のニーズは異なる
  • 「何を求めているか」より「なぜ求めているか」を探る
  • 競合が満たしていない潜在ニーズこそが差別化の源泉

ポジショニングマップで”空白地帯”を見つける

  • 競合がひしめく激戦区を避ける
  • 未充足ニーズが存在する領域を特定
  • 自社の強みを活かせる戦場を選択

ロカベン6視点のうち「競合」は、”他との違い”を論理的に作るための視点。競争を避けるのではなく、”自分たちの戦う場所”を選ぶことが差別化の第一歩です。

ただし、美しいポジショニングができても、それを実現する経営資源がなければ意味がありません。次のステップでは、自社の真の強みを見極める必要があります。


次回予告

第4話:「自社の武器を見極めろ!VRIOで強みを再構築」

“支援重視型コワーキング”の方向性が見えた凛子たち。しかし実際にそれを実現するための”武器”──人・知識・仕組み──はあるのか?

鈴木税理士が提案したのは、企業の強みを客観的に評価する「VRIO分析」。そして新たに参加した若手社員・三浦のデータ分析が、思わぬ発見をもたらす。

「我々の本当の強みは、技術力ではなく…」

自社の隠された武器とは?そして、それは本当にコワーキング事業で活かせるのか?

次回、驚きの強み発見劇が展開!


(第3話・完)

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