【寸劇で学ぶ】ロカベンで挑む!第4話:自社の武器を見極めろ!VRIOで強みを再構築

前回のあらすじ

顧客層と市場構造を整理し、”支援重視型コワーキング”の方向性を見出した凛子たち。しかし次に浮かぶのは現実的な疑問──「うちにはその支援を実現できる”強み”があるのか?」。ロカベン第4の視点、”経営資源”の検証が始まる。


第1章:理念だけでは進まない

翌週の火曜日、田中社長は上機嫌で会議室に現れた。

田中「”成果が出るコワーキング”、いい響きだろ?もう不動産業者に内見の予約も入れたぞ!」

凛子の心臓が跳ね上がった。また始まった。コンセプトができたら即行動。でも、本当に実現できるの?

凛子「ですが、理念だけでは事業は回りません。人も時間も足りない。どこを強みにすべきか、見極めが必要です。」

田中の足が止まった。その時、タイミングよく鈴木税理士が会議室に入ってきた。

鈴木「まさに今が分析のタイミングです。今日はVRIO分析を使って、自社の”武器”を棚卸ししましょう。」

凛子はほっと息をついた。また鈴木先生が現実に引き戻してくれる。


第2章:VRIOとは何か

鈴木がホワイトボードに4つの文字を大きく書いた。

V・R・I・O

鈴木「VRIOは、自社の経営資源を4つの視点で評価する方法です。」

鈴木の説明に、凛子は身を乗り出した。

V(Value・価値):顧客にとって価値があるか
R(Rarity・希少性):他社にはない独自のものか
I(Imitability・模倣困難性):簡単には真似できないか
O(Organization・組織):それを活かす仕組みがあるか

鈴木「この4つを満たす資源が、持続的な競争優位を生むんです。」

凛子「つまり、”強みを構造化する”分析ですね。」

田中は困惑した表情を浮かべた。

田中「でも、うちの強みって何だ?技術力なら他にもあるし…」

凛子も同じ疑問を抱いていた。確かに、うちの本当の強みって何なんだろう?


第3章:三浦、登場! データの若手

その時、会議室のドアがノックされた。

三浦「失礼します!三浦圭です。データ分析の件で呼ばれました!」

現れたのは、利発で真面目そうな若手社員だった。手にはノートパソコンと分厚いファイルを抱えている。

凛子「助かります。社内のリソースを洗い出しましょう。」

三浦はテーブルにファイルを広げた。そこには顧客アンケートや過去のプロジェクト評価が丁寧にまとめられている。

三浦「過去2年間の顧客フィードバックを分析してきました!」

三浦の資料を見て、凛子は驚いた。こんなに細かく分析してくれてたなんて。

鈴木「素晴らしい準備ですね。では、データから見える強みを探してみましょう。」

三浦がページをめくりながら説明する。

三浦「お客様の評価で多いのは、”現場を理解してくれる””話が早い””要求の背景まで汲み取ってくれる”です。技術的な評価より、コミュニケーション面の評価が圧倒的に高いんです。」

鈴木「興味深い。”現場を理解してくれる””話が早い”……。技術よりも”ヒアリング力”が評価されてますね。」

凛子の心に電撃が走った。そうか、私たちの強みは技術そのものじゃない。

凛子「それは確かに、うちの文化ですね。新人の頃から、まず現場を理解することを教え込まれます。」


第4章:強みをVRIOで解剖する

鈴木「ではVRIOで整理してみましょう。」

鈴木は慎重にホワイトボードに書き込んでいく。

V(価値):顧客課題を深く理解できる

  • 単なる技術提供ではなく、業務改善まで提案
  • 現場の人間関係やプロセスまで把握

R(希少性):若手にもヒアリング力が浸透

  • 他社では一部のベテランだけが持つスキル
  • 組織全体の文化として根付いている

I(模倣困難性):現場経験と信頼の蓄積

  • 長年の現場経験から生まれた直感力
  • 顧客との信頼関係の積み重ね

O(組織体制):情報共有と改善の仕組み

  • 現場の知見を社内で共有する文化
  • 継続的な改善プロセス

鈴木「この4点がそろっているのは強い。つまり、御社の武器は”人と文化”です。」

田中の目が輝いた。

田中「なるほど!技術じゃなくて、人の力が強みなんだな。」

凛子は深く納得していた。確かに、うちの社員はみんな顧客の話をよく聞く。それが当たり前だと思ってたけど、実は特別なことだったのね。


第5章:強みを新事業へ転用する

だが、田中はまだ腑に落ちない様子だった。

田中「でも、その”人の力”をどうコワーキングで活かす?」

鈴木の顔に確信に満ちた笑みが浮かんだ。

鈴木「利用者ごとに”課題ヒアリング”を行い、伴走する仕組みを作る。御社の強みをそのまま”支援の仕組み”に変換できます。」

三浦が手を挙げた。

三浦「それなら”成果の見えるデータ”も取れます!利用者の進捗を可視化して、より良い支援につなげられるかも!」

凛子の脳裏に、鮮明なビジョンが浮かんだ。

凛子「まるで、”現場密着型の経営支援”ですね。システム開発で培ったヒアリング力を、個人の成長支援に活かす。」

鈴木「その通り。コワーキングの形をした、”成長のプラットフォーム”です。」

これなら、他社との圧倒的な差別化ができる。 凛子の心に、これまでにない確信が宿った。


第6章:見えてきた事業の全体像

会議室のホワイトボードには、これまでの分析結果が体系的に整理されていた。

ターゲット:孤独なリモートワーカー
ニーズ:成長機会とサポート
競合との差別化:支援重視×適正価格
自社の強み:現場密着型のヒアリング力
提供価値:個別伴走型の成長支援

凛子「やっと、全体像が見えてきました。単なるコワーキングスペースじゃなくて、”成長支援付きの共創空間”ですね。」

田中「いいじゃないか!これなら他にはない価値を提供できる!」

だが、三浦が重要な指摘をした。

三浦「でも、うちだけで全ての支援をカバーするのは難しくないですか?経営相談とか、法務とか…」

凛子はハッとした。そうか、私たちの強みだけでは限界がある。


第7章:芽生える連携の予感

田中が何かに気づいたような表情を見せた。

田中「支援を深めるなら、専門家との協力も必要かもな。数字や経営の相談にも応えられたら、地域の挑戦者には心強い。」

鈴木の目がキラリと光った。

鈴木「それは素晴らしい発想です。自社の強みを核にしながら、外部の専門性を組み合わせる。」

凛子の心に、新しいビジョンが広がっていく。(自社の強みと、外部の知恵が交わる……。その先に、新しいコワーキングの形が見えてくる気がする)

鈴木「ええ、連携をどう設計するかが次のテーマです。ロカベン6視点の”連携関係”にも繋がってきますね。」

三浦が興奮して手を叩いた。

三浦「税理士さんや弁護士さん、マーケティングの専門家とか!みんなでチームを組んで利用者を支援するんですね!」

凛子は確信を持って言った。

凛子「私たちがハブになって、地域の専門家と利用者をつなぐ。そうすれば、一人では解決できない課題も、チームで乗り越えられる。」

これが、私たちの目指すコワーキングスペースの姿なのね。 凛子の胸に、温かい確信が宿っていた。


第8章:次なる課題への予感

会議が終わろうとした時、鈴木が最後に重要な指摘をした。

鈴木「素晴らしい構想ができました。ただし、一つ確認したいことがあります。」

全員の視線が鈴木に集まった。

鈴木「なぜ、この事業をやるのですか?利益のため?地域貢献のため?それとも…?」

田中は言葉に詰まった。凛子も、突然の質問に戸惑った。

凛子「それは…」

鈴木「理念が曖昧なまま進むと、必ず判断に迷う時が来ます。次回は、”なぜやるのか”を明確にしましょう。」

凛子の心に、新たな課題が芽生えた。確かに、私たちはなぜこの事業をやりたいの?その答えが見つからないと、きっと道に迷ってしまう。


今回の学びポイント

鈴木税理士のまとめ講義

VRIO分析は、自社の経営資源を「強み」として可視化する手法です。

V(Value・価値):価値を生むか

  • 顧客にとって本当に意味のある資源かを評価
  • 単なる「良いもの」ではなく「求められているもの」かどうか

R(Rarity・希少性):希少か

  • 競合他社が簡単に持てない独自性があるか
  • 「当たり前」だと思っている自社の特徴こそ希少な場合がある

I(Imitability・模倣困難性):真似されにくいか

  • 一朝一夕では獲得できない経験や文化
  • 人的ネットワークや信頼関係は最も模倣困難

O(Organization・組織):仕組みで活かせるか

  • 個人の能力を組織として活用できる体制があるか
  • 属人的なスキルを仕組み化できているか

ハードよりソフト。人こそ最大の経営資源です。 ロカベンで”人の力”をどう組織的に活かすかを考えれば、新規事業にも持続的な強みを生み出せます。

重要なのは、自社の「当たり前」が実は「特別」である可能性を見抜くこと。そして、その強みを新しい事業領域でどう活用するかを構造的に考えることです。


次回予告

第5話:「理念なき事業に魂は宿らない」

事業の骨格が整い始めた矢先、チームの中で”目的のズレ”が生じる。利益を重視する田中、地域貢献を望む柚木、成長を求める三浦…それぞれの想いが交錯する中で、凛子は問う。

「私たちは、なぜこの事業をやるのか?」

会社の理念と個人の想いが激突する時、ロカベン第5の視点”理念”が真の意味を持ち始める。果たして、バラバラになりかけたチームを一つにまとめる”魂”とは何なのか?

理念なき事業に未来はあるのか──

次回、チーム分裂の危機が訪れる!

(第4話・完)

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