前回のあらすじ
理念を再定義し、「挑戦者を支え、地域を元気にする」という軸を明確にした田中社長と凛子。チームの方向性はひとつになり、コワーキングスペースの構想も現実味を帯びてきた。
だが、最後に残る課題は──どうやって持続的な仕組みにするか。理想を事業に変える最終フェーズが始まる。
第1章:最終会議、始まる
月曜日の朝。新規コワーキングスペースの名前は「Gear Second(ギア・セカンド)」に決まっていた。”次のギアに入れる”という意味に加え、「熱量を上げ、進化する場所」という想いが込められている。
開業予定地の見取り図を前に、社長・凛子・三浦・柚木がテーブルを囲んでいる。朝の光が差し込む会議室には、これまでにない高揚感が漂っていた。

田中「いよいよここまで来たな。理念も方向性も決まった。あとは”構造”だ!」
田中の声には確信が込められていた。数ヶ月前の迷走ぶりとは別人のようだ。
凛子「はい。理想だけで終わらせないために、収益モデルを整理しましょう。」
凛子も、以前の自分とは違っていた。ロカベンを学んできた今なら、きっと最後まで形にできる。
そこへ、いつものように鈴木税理士が現れた。だが今日の彼の表情は、どこか特別な輝きを放っていた。
鈴木「では、今日はビジネスモデルキャンバス(BMC)で全体を設計します。理念を”事業の地図”に落とす仕上げですね。」
第2章:BMC──9つの箱で描く事業構造
鈴木がホワイトボードに大きな表を描き始める。3×3の9つのボックスが現れた。

鈴木「BMCは、事業の全体像を一枚で整理するツールです。」
彼は一つずつボックスに名前を書き込んでいく。

鈴木「この9つを埋めれば、”理念を支える構造”が見えてきます。」
凛子は興奮していた。これまで学んできたロカベンの全ての要素が、この一枚に集約される。
第3章:描かれていくビジネスモデル
凛子が最初に口を開いた。
凛子「顧客セグメントは、”地域の挑戦者”──個人事業主や起業準備者ですね。STP分析で明確にした層です。」
柚木が続いた。
柚木「価値提案は、”相談しながら進化できるコワーキング”!単なる作業場じゃなくて、成長を支援する場所。」
三浦も手を挙げた。
三浦「チャネルはWebと口コミ、顧客関係は”伴走型支援”で!VRIO分析で見つけた私たちの強みを活かします。」

田中は満足そうに頷いた。
田中「みんな、本当に成長したな。数ヶ月前とは全然違う。」
鈴木も感慨深そうだった。
鈴木「では、主要資源とパートナーを見ていきましょう。ここが今日の核心部分です。」
第4章:パートナーシップの可能性
田中「主要資源は”人”。社員のヒアリング力、地域との信頼関係だ。これは間違いない。」
凛子「そして、パートナーには──商工会、金融機関、そして士業などの専門家。」
鈴木の表情が変わった。これまでの冷静な分析者から、何か熱いものを内に秘めた人物へと変貌していく。
鈴木「その”連携の設計”こそが、ロカベンの最終ステップです。そして…」
彼は一度言葉を切った。
鈴木「税理士などの専門家が関わるコワーキングには3つの意味があります。」
1: 信頼性の付与:数字の裏付けで挑戦者に安心を与える。
2: 課題の早期発見:数字から経営課題を読み取れる。
3: 地域ネットワークの接続:行政や金融機関との橋渡しができる。
田中「なるほど。”挑戦者の伴走者”として最適だな。」
第5章:税理士、参戦を決意する
鈴木は静かにうなずいた。数秒の沈黙の後、照れくさそうに笑いながら言った。
鈴木「……実を言うとね。一緒に考えているうちに、私自身もワクワクしてきたんですよ。」
凛子の心臓が高鳴った。まさか、先生が…?
鈴木「数字の支援だけでなく、”挑戦の現場”に立ち会いたい。”Gear Second”──その名に込めた熱に、私も引き込まれました。」
田中が身を乗り出した。
田中「先生、それは…」
鈴木「はい。私もこのプロジェクトに参画します。税理士として、そして、一人の”挑戦者”として。」
会議室に電撃が走った。凛子は思わず立ち上がった。
凛子「先生……それは……!」
田中「先生、ついにギアを上げましたね!」
鈴木「ええ。”ギアセカンド”ですからね。もう誰も私にはついてこれませんよ(笑)」
鈴木の目には、これまで見たことのない輝きがあった。この人も、挑戦者だったのね。

第6章:連携が生む加速──シナジー戦略
三浦が興奮して手を叩いた。
三浦「先生が一緒なら、”支援の連鎖”が加速しますね!利用者のデータ分析と税務・経営の専門知識が組み合わさる。」
柚木も目を輝かせた。
柚木「”数字の安心”と”人のつながり”が両輪になる!挑戦者にとって最強のサポート体制ですね。」
鈴木「まさにシナジー戦略。お互いの強みをかけ合わせることで、変化のスピードが上がります。」
鈴木はホワイトボードに3つの円を描いた。それぞれが重なり合う部分に光が当たっている。

企業の理念 × 専門家の知見 × 地域の課題
鈴木「この3つが重なる場所に、新しい価値が生まれる。それが、”挑戦を進化に変える”仕組みです。」
凛子は深く感動していた。
凛子「”顧客の課題”を中心に、地域全体がひとつのチームになる……。これって、ロカベンの本来の姿なのかもしれませんね。」
田中「Gear Secondは、まさに”地域がギアを上げる”ための拠点だな!」
第7章:完成したビジネスモデルキャンバス
2時間後、ホワイトボードには完成したBMCが描かれていた。9つのボックスが全て埋まり、それぞれが有機的につながっている。
【顧客セグメント】 地域の挑戦者(個人事業主・起業準備者)
【価値提案】 相談しながら進化できるコワーキング
【チャネル】 Web・SNS・口コミ・専門家ネットワーク
【顧客関係】 個別伴走型支援・定期面談・成果共有会
【収益の流れ】 月会費・相談料・イベント収益・企業研修
【主要資源】 ヒアリング力・地域信頼・専門家ネットワーク
【主要活動】 課題ヒアリング・個別支援・コミュニティ運営
【パートナー】 鈴木税理士・商工会・金融機関・士業
【コスト構造】 家賃・人件費・システム・専門家報酬
凛子は完成した図を見つめながら、深い満足感に包まれていた。

凛子「これまでのロカベン分析の全てが、この一枚に集約されている。理念から始まって、顧客、競合、資源、そして連携…全てがつながっている。」
第8章:未来への地図──ギアセカンド、始動
完成したビジネスモデルキャンバスの中央には、太字で書かれた言葉が輝いていた。
「挑戦者が、自分の限界を超えてギアを上げる場所」
凛子「この言葉、まさに”Gear Second”の本質ですね。ゆるやかな変化じゃなく、心が沸騰するような”進化の場”。」
鈴木「理念を燃料に、顧客・資源・連携がすべてつながる──それが、ロカベンが導く”経営の進化形”です。」
田中は立ち上がり、窓の外を見つめた。
田中「まさにギアセカンド。俺たちも、もう止まれないな。」
鈴木「止まる必要なんてありません。挑戦は、続く限り価値になります。」
凛子は心の奥で呟いた。数ヶ月前、社長の無茶振りから始まったプロジェクト。でも今、私たちは本当に意味のある事業を作り上げた。
第9章:新たなスタートライン
会議が終わった後、凛子は一人会議室に残った。ホワイトボードに描かれたBMCを見つめながら、これまでの道のりを振り返っていた。

第1話:ロカベンとの出会い
第2話:STP分析でターゲット明確化
第3話:5フォース分析で競合理解
第4話:VRIO分析で強み発見
第5話:理念の再構築
第6話:BMCで全体設計
凛子「私も、随分変わったなあ。最初は社長の思いつきに振り回されるだけだったのに、今では戦略的に物事を考えられるようになった。」
そこへ、鈴木が戻ってきた。
鈴木「凛子さん、素晴らしい成長でしたね。」
凛子「先生のおかげです。ロカベンという武器を教えていただいて。」
鈴木「いえ、あなた方の挑戦する心があったからこそです。私も、一緒に挑戦させていただいて、本当に刺激的でした。」
今回の学びポイント
鈴木税理士のまとめ講義
ロカベンの最終視点「ビジネスモデル+連携関係」は、企業の理念を軸に、持続的な”進化の仕組み”を描くステップです。
BMC(ビジネスモデルキャンバス):9つの要素で事業を設計
- 顧客セグメント・価値提案・チャネル・顧客関係・収益の流れ
- 主要資源・主要活動・パートナー・コスト構造
- これらが有機的につながることで、持続可能な事業モデルが完成
シナジー戦略:理念を共有するパートナーとの連携
- 自社の強みだけでは限界がある
- 同じ理念を持つ専門家との連携で価値を加速
- 地域全体をひとつのチームにする発想
ロカベン6視点の統合
- 顧客・市場(STP分析)
- 競合(5フォース・ポジショニング)
- 経営資源(VRIO分析)
- 理念(MVV・Golden Circle)
- ビジネスモデル(BMC)
- 連携関係(シナジー戦略)
ロカベンは単なる分析ツールではありません。理念を起点に、経営と地域を”進化”させる装置です。そして最も重要なのは、分析で終わらず、実際に行動を起こすこと。挑戦こそが、全ての価値の源泉なのです。
エピローグ
数か月後。「Gear Second」オープン初日。
地域の起業家たちが集まり、熱を帯びた空気が広がっている。壁際では、鈴木税理士が若手起業家に数字の相談を受けている。その表情は、会議室にいた時の彼とは別人のように生き生きとしていた。

凛子「先生、完全にこの場所の一員ですね。」
鈴木「”挑戦者の現場に立つ税理士”、悪くないでしょう?」
田中が二人に近づいてきた。
田中「先生が加わってから、ここは本当に”加速”しましたよ。利用者の方々の表情が全然違う。」
鈴木「ギアセカンドですからね。血が巡り、想いが動き、すべてが進化していく。」
凛子はその光景を見つめながら、静かにノートを開いた。そこに一行、書き記した。
「ロカベンは、経営を可視化する地図。でもその本質は、”挑戦者の心に火を灯すギア”だ。」
窓の外では、新しい挑戦者たちが今日もGear Secondの扉を開けて入ってくる。凛子の新しい挑戦は、これからも続いていく。
【完結】
~秘書・佐藤凛子の新規事業奮闘記~
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この物語を通じて、ローカルベンチマークの6つの視点が、どのように新規事業の成功につながるかをお伝えできたでしょうか。理念を軸にした経営判断、そして地域との連携による価値創造。これらは全て、実際のビジネスでも活用できる考え方です。
あなたの会社にも、きっと「Gear Second」が必要な瞬間が来ます。その時、ロカベンという武器を思い出していただければ幸いです。
挑戦は、続く限り価値になる。
(全6話・完)
